1969年、米国シアトルにて第2回目の乳幼児突然死に関する国際学会が開催され、SIDS(乳幼児突然死症候群)という診断名に統一することが提唱され定義および診断方法の基準が議論されました。
SIDS(エス・アイ・ディ・エス)とは、S(sudden)、I(infant)、D(death)、S(syndrome)の略語です。
これ以降、乳児を突然襲う原因不明の内因死(病死)を表現する概念としてSIDSが受け入れられていき、今日、先進諸国では乳児死亡原因の最も大きな割合を占めています。
1994年、日本では厚生省研究班が、SIDSと診断するに際しての定義を『それまでの健康状態及び既往歴からその死亡が予想できず、しかも死亡状況および剖検(解剖)によってもその原因が不詳である乳幼児に突然の死をもたらした症候群』と一本化して規定しました。
厚生労働省によると、近年の日本のSIDS死亡数は2012年は152人、2013年は125人、2014年は146人とされています。
SIDSの今後
大人の病気でも未だ解明されていないものもあります。時代が流れるにつれ研究がすすみ、不治の病といわれていた病気も治せるようになったものもあります。
乳児の急死に多いSIDSも原因が究明される時代がくるかもしれません。
しかし現在原因不明とされるSIDSという診断の中に、虐待・殺人などによる窒息死や事故による不慮の窒息死などが含まれているのが事実です。
そして、そのほとんどが、同じような場所であり、同じような形態・条件で起こっています。
時代の流れとともに、医師や警察官、裁判官などの中に、真相を究明しようという動きが出始めています。
研究者らからの問題提起、そして、解剖時に警察から示される発見時の死亡状況についても、問題意識をもち真相を究明しようとする時代に変わってきました。
医師によっては、SIDSのあいまいな診断を廃止するよう主張するものもいます。
現在は、事故や事件が起きた地域、もしくは、解剖を担当する医師、もしくは、事故や事件を捜査する管轄の警察などの運により、SIDSと診断されるか窒息死と診断されるかが分かれています。一人一人の仕事の熱心さや知識にゆだねるのではなく、国として、SIDSの診断基準を明確にし、統一性をもたせ、過去の事例から同じ過ちをなくし、乳児の急死を回避できるようにすることが、これからの未来の日本を担う子供たちのために取るべき行動ではないかと思います。
安全な保育をおこなうためには
- 適正人数の保育者を確保する
- 同時間帯に保育者が1人しかいないということがないようにする
- 乳幼児には常に誰か1人の保育者がついているようにする
- うつ伏せ寝にしない。必ずあお向けにする
- 自分で寝返りを打った場合にも、あお向けにする
- 部屋の温度は適温にし、空気は適宜、入れ替える
- ベッドは安全基準に達し、マットレスは硬めのものを使用する
- 1つのベッドに複数の乳児を寝かせない
- 顔にタオルケットやふとんがかからないようにする
- 寝ているときには呼吸や体温について、間近で見たり触ったりして確認する
- ベッドのなかに、寝るのに不必要なおもちゃなどは入れない
- サークルの扉はきちんと閉める
- 他の乳児の接近には注意を払う
- 哺乳瓶や離乳食は衛生に気をつけ、回し飲み、同じスプーンの使い回しをしない
- 様子がおかしいときには、素人判断せず、すぐに医師の診断を受ける
(武田さち子/著 「保育事故を繰り返さないために」より) |